2008年07月26日

建築家モン太の日々

3.
「この前、ニュースで流れていたUさんの住宅、どうなったのかな」買い物を済ませて、来た道を引き返す途中、妻が話の続きを切り出した。
「ああ、あの赤と白の縞模様の家か」
「話題になったとき、お父さんは、あんなのにクレームを付けるのは近隣住民の横暴なんて言っていたけど、今はどう?」
これまた痛いところを攻撃してくる。30年も夫婦を続けていると弱点を心得ている。この時刻に、この風景の中で聞かれればさすがに怯む。帰り道、西に向かって車を走らせると、あれほど厳しい光線を発していた真夏の太陽も山の稜線と深紅の夕焼けを演出する光源になっている。かつては夕焼けをバックにシルエットとなっていた大きな屋敷の樹木も切り倒され、効率よく区画された住宅団地に変わって、その画一的な屋根で反射された光が眩しいばかりである。
「ほんとにな、やはり廻りとの調和は大事だな」
「あの時、お父さんは、奇抜な建物でも時間が経つとなじんでくると言っていたけど」
「そうでないのかもしれないな。建物にも歴史があるように、風景にだって歴史があるってことだろうか」
「人間、誰だって何かの時、ここへ来れば落ち着くとか、元気が出るってことあると思う」
「法律にだって国定公園内の建築制限だとか風致地区の指定だとか、あるにはあるが、そればかりではいけない。そこに生まれ育った人たちにとっては、そこが一番大事な場所なんだ」
「お父さんの仕事も、なかなか大変だね」
庭の桜の木で、昼間にあれほど鳴いていたミンミンゼミも静かになっていた。

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posted by モン太 at 04:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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