2008年07月27日

建築家モン太の日々

4.
「ここまで来ると、だいぶ涼しくなるな」
果たして気温差が何度あるのかは不明である。N川を上流へと走り、1時間半ばかり上ってきた。
 5年前から県や市町村の補助金を使って、来るであろう南海地震に備えて木造住宅の耐震診断と強度不足の住宅の耐震改修事業を継続している。建築家モン太も以前から耐震診断の仕事に関わっていて、今日はそのため、N川沿いに上っているのである。耐震診断員は大概の場合、その市町村に住んでいる者が請け負うのが普通であるが、山間部には担当できる者がいないのか、モン太のところに度々、話が来る。往復4時間の距離を走って、2時間ばかりの仕事をしても採算を考えれば、とてもできる仕事ではない。それでも毎回、断ることなく受け続けているのには理由がある。
「山の木々や渓流を見ているだけでも涼しいね」
例によって助手席に座っている妻が言った。妻は、このN川上流の仕事にはたいてい同行する。同行はするが別に手伝うわけでもない。仕事が終わるまでの間、その辺をうろうろと、景色や空気を楽しんでいるのである。
 妻の生まれたところは、県内でも有数の山間部である。若いときに妻の生家へ初めて行ったときのことは鮮明に覚えている。田舎の小さな町から車で1時間近く入ったとき、「着いたよ」と車を降りて、それから徒歩で山を登ること40分。そんなところで生まれ育った妻である。
「あんなところにも家がある。不便だろうな」
自分の今住んでいる場所を基準に山の中腹の民家を見て言った。そういいながらもまんざらでもなさそうなのだ。故郷の風景と重ね合わせているのかもしれない。
 海岸近くで生まれ育ったモン太の場合は、別の意味で山間部が好きなのだ。診断の仕事を終えて、住む人との話が好きだ。このような地域になると、過疎化が急激に進み、お年寄りが多い。この人達の話は素朴でありながら、大変興味深い。築後200年も経過した住宅を維持管理しながら住んでいるのである。すきま風の入る冬の厳しさは「あんた等には分からんだろ」という。最近になって、Iターンだとか、田舎に住もうだとかがブームのようであるが、この辺の厳しさを理解した上でのことなのだろうか。
 帰る時刻の夕方になると、さすがに温度計で測っても数度は違うだろうと思われる涼しさになっていた。

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posted by モン太 at 05:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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